この記事は、グッとくる部分について仕組みを明らかにするという目的で書かれています。
第一回.長調の楽曲における自然的短音階の効果について
1.例えばどんな曲?
メジャースケール(長調)における、自然的短音階の力。これエグい。
例にあげられる曲として代表的なものに、
広瀬香美 - ロマンスの神様 (Official Video) - YouTube
ここのBメロに注目(注耳?)して欲しい。
目立つにはどうしたらいいの?〜🎵
ここでAメロの明るい縦ノリから少し落ち着いて横ノリに変わる。
そして「めだつには(ラ♭シ♭シレ♭ミ♭)」の部分が見出しにある通り自然的短音階になっているのだ。ここ!!!!!!!
2.ところで自然的短音階って何
コトバンクには、
「〘名〙 (natural minor scale の訳語) 短音階の一つ。第二音と第三音の間および第五音と第六音の間に半音をもち、他は全音の七音音階。」
と説明があったが、これはちょっと意味が分からない。ので、簡単に説明してみる。
そもそも短音階には3つの種類がある。それは、
・自然的短音階
の3つだ。
この3つの関係性は、ポッチャマ、ポッタイシ、エンペルトに似ている。そう、進化しているのだ(語弊を恐れずに言えば)。
Cの長調を元に説明していく。
短音階はそもそもドレミファソラシドを6度ずらしたラシドレミファソラが基になっている。6度ずらしただけのありのままの姿なので自然的短音階と呼ばれるのだ。しかしこれには問題がある。それは、終止感の薄さだ。長調ではシとドの間は半音。しかし自然的短音階ではソとラは全音で、このことは終止感の減少、さらには和声の問題にも繋がる。
例えばお辞儀のコード(ジャーン(気をつけ)、ジャーン(頭を下げる)、ジャーン(頭を上げる))。このコードの内訳はC(ドミソ)、GまたはG7(ソシレ(ファ))、C(ドミソ)となっていて、やはりGを聞いたらCで上げたくなる(なる)。それは主音であるC、属音であるGの性質のみによるものではない。とにかくシの存在がデカ過ぎるのだ。信じてください。シが無いと私たちに強烈な頭を上げ観念を育ませない。(実際にやってみてください、ヤマハのCMでも子供にドミソシファソドミソと歌わせているので)
これを解決したのが和声的短音階でラシドレミファソ♯ラである。しかしこれは西洋の音楽理論。和声的短音階にはまだ問題があった。それは♯を付け加えた事によるファとソ♯の間の増2度の存在だ。増2度とは全音からもう半音伸びた音である。
ではこれの何が問題かというと、以下はWikipediaからの引用だが、
「特定の音階において増二度音程は音楽に特徴的な効果をもたらし、その効用から減七度音程と同様に伝統的西洋音楽からは「東洋的で下品」と軽蔑されてきた歴史をもつ。」
らしい。増2度はちょっと民族音楽っぽい(アングロサクソンも民族だろうがというのは一度置いておいて)かったのだ。
それを解決するために、ラシドレミファ♯ソ♯ラ(上行系)、下行は自然的短音階としたのが旋律的短音階である。しかし、この使い分けがされていたのはクラッシック音楽が主で現在では上行系のみが使われることが大半のようだ。(参照:3つの短音階(自然・和声・旋律)の違い - 長内音楽教室)
3.自然的短音階を知れたところで
ロマンスの神様のBメロに使われていた自然的短音階に戻ってみよう。
そう、短音階と言われるだけあってちょっと暗くてミステリアスな雰囲気がある。それが前半の明るいAメロと対比を生んでいて良い。
そして、ロマンスの神様を語る上で絶対に述べなければならないのが転調。AメロはA♭、BメロはBからA、サビはF♯になっている。何をしてたらこんな怒涛の転調ができるのか。そして見てください。
A♭:とーもだちのともだちに(A♭)、転調
B :目(A♭)立(B♭)つ(B)に(D♭)は(E♭)
これヤバい。転調前の主音(A♭)からD♭まで一気に飛ぶのヤバい。雰囲気一気に変わるのヤバい。気持ち良すぎる!!!!!!!!!!!!対比気持ち良い!!!!!!!!!!!!!!!
他にもこの形の亜種みたいな曲がある。
東京女子流の「ディスコード」だ。
この曲には転調はない。しかし気持ち良い。それは何故かというとこの曲のAメロにはドレミラの4つの音しか使われていないことが関係すると推察している。
止まらない感情(ドレミ)
こぼれ落ち彷徨う(ドレミラ)
闇に光る純情(ドレミ)
寄り添って求める(A)
しょ(A)う(B)ど(C)う(D)の(E)強さ
まためっちゃ飛ぶ!!!!!!!一気に5音!!!!!!!!!!!気持ち良い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これはロマンスの神様でも言えることで、ここまでではないですが同様にAメロで基本的に音の飛躍があまり無いです。音の飛躍✖️自然的短音階の爆発力。
そしてこれをサビに行く時に使った曲があります。倉木麻衣の「Secret of my heart」です。
倉木麻衣 「Secret of my heart」 - YouTube
言(G)え(A)な(B♭)いこ(G)と(A)が(B♭)ま(B♭)→(トニックからオク下の二度の音へ(ヤバい))→だ(C)
↑B♭の短音階
ひとつだ(C)け(D)あ(E♭)る(F)
↑E♭の短音階
ここまできて次の音はGかな?(Eメジャーの調への転調)と思わせて、、、
Secret(F) of my heart
↑D♭
はぁ⁉️やば過ぎるだろ…
最後にこれらの美味しいとこ取りしたみたいな曲が、東京事変「能動的三分間」です。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。
音の飛躍の落ち着いたAメロ〜
男女平等(D♭)
精(C♭)神(D♭)崩(E)壊(F♭)前(G♭)夜
ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ロマンスの神様」「ディスコード」のBメロへの雰囲気の変化の機能、いわば「序破急」の破の部分だったのに対し、「能動的三分間」と「Secret of my heart」の二曲はAメロからのアクセル、特にこの曲は急発進、アクセル全開。このことによってノリ良く最高潮に持っていっているのだ。そして音符に対しての言葉の当て方は完全な1文字区切りではなく1音節に当てているのでドッシリしててその上昇が破茶滅茶に堅くなっている。そして一度のサビで浮雲が二度目を刺すという。良すぎる。
関係ないですが、インダストリアルなイントロという点でも「ディスコード」に共通する点がある。
4.いかがでしたか
はぁ、気持ち良かった。。
自然的短音階の持つ陰とミステリアスさ、そして飛躍力。日本人はやっぱりAmが好き。
説明がめちゃ甘なので楽典や専門家のネット記事や動画をちゃんとみよう!
こんな性癖曲を皆さんも見つけてみてください。